家づくりの前提が、3.11以降いろいろな意味で損なわれたり、変化してしまった。
昨日は「NPO家づくりの会」の総会があり、仲間の建築家と雑談しているなかで 「家を建てたら一生その土地に骨をうずめる覚悟がなければならない」という言葉を聞いて、 どこか強い違和感を感じた。 ある土地に家を建て、地域の中で住み暮らし、その土地の環境をこつこつとはぐくんでいくような生き方、たとえば農家の方の生き方は、一つの理想的な生き方だと思う。 でも、3.11以降、日本中に存在している原発が稼働し続けいているかぎり、そうやってこつこつと育んできた家が一瞬にして損なわれてしまうリスクと常に隣り合わせであることが明らかなになってしまった。 人生には、思いもかけない出来事が起こるものだから、終の棲家と思って建てた家を手放さなければならないリスクはこれまでもあった。地震や津波などの自然災害、大火や戦災によって家を失ってしまうことは日本の過去の歴史を振り返れば幾度も繰り返されてきた。そのたびに日本人は「無常感」をもって、その厳しい現実を受け入れて、心を落ち着かせて、もう一度この土地でやり直せばいいじゃないか、と再起してきた。 でも、放射能でひとたび汚染されてしまった土地は、何十年、何百年と、生き物の細胞の中を放射線が通過し、DNAのある部分を破壊し続けてしまうのだ。 こんな現実を前にして、私たちはどんな家づくりをこれからしていたらよいのだろうか。 どんな家づくりなら、希望がもて、夢が描けるのか? 梅棹忠夫のいう「暗黒の中の光明」は、こと家づくりに関してどこにみいだせるのだろうか。 これから考え続けなければならないと思うのだが、 一つの方向性は、私は「移住することの自由さ」にあると考えている。 それには中古住宅の流通市場が活性化する必要があって、 そのためには土地の価格や金融の課題もあるだろう。 でも、もっとも強固な壁は人々の固定観念なんだろうな。 自分も含めて、意識的に頭を柔らかくしておかなければならないなと思う。 だから 「家をもったら一生、その土地で骨をうずめなければならない」という言葉を聞いて違和感を覚えたのだろう。
by craftscience
| 2011-06-19 07:30
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